エモいって言葉を知ったのは、ここ数年のこと。
もうね、若者言葉なんてまったく理解できないオジサンだが、いわゆる「エモい」という言葉は瞬時に理解できた。それは言葉の横に「エモい写真」があったためでもある。
普段、若者言葉でイラっ※としていても、実は「エモい」はオッサンも嫌いじゃない。
というか「エモい」はオッサンのためにこそ、という気もする。
歳を取るごとに涙腺はヨワヨワしくなって、将来の事よりも昔話が多くなる。たぶんオッサンは感傷的になりやすい年頃なのだ。
エモいという言葉をWikipediaで調べると
「趣がある」
「グッとくる」
という事らしい。
私はもっぱら「哀愁」とか「ノスタルジー」という言葉で「エモい」を消化しているが、こういう言葉は、そろそろ枯れてきた中高年にこそ似合うのではないだろうか?
※ 会社でお客さんと話している後輩が「なるはやで」とか言っているのを横で聞いて愕然とした。しかも「なるはや」という言葉は既に若者言葉でないと聞いて2度目の愕然。
さて、ノスタルジーを感じる写真を考える時、昔っぽい写真というのが密接に関係しているように思う。「くっきり、はっきり、鮮やか」という今っぽさでは無く、どことなく柔らかで昔を感じさせる色調、つまりフィルムっぽい感じが昭和世代を感傷的にさせるのだ。
昔っぽい写真にできれば私の下手っぴな写真も「エモく」なるのでは?なんて事を考えるも実現する方法が無かった。少し前ならVSCOプラグインを買うのが手っ取り早かったが値段に躊躇して買いそびれた。現像ソフトに慣れた人ならアレコレとパラメータを弄る事もできるだろうが初心者には知識が足りないのがもどかしい。
ところが、昨年末にPENTAXのカメラに「里び」というカスタムイメージが実装された。残念ながら対応している機種は限られるが、これを使うと昔ぽっさが簡単に実現できるかもしれないと思った。
今回は「里び」で現像した写真が昔っぽい感じを出せるか試してみたいと思う。
カスタムイメージ「里び」
まずは「里び」の特徴について。
メーカーの解説を引用する。
シアンがかった特徴的な青空、くすんだ黄色、褪せたような赤色など、60~70年代のカラー写真の風合いにも似たカスタムイメージ。独特な赤の表現は、人物撮影などにも向いています。乾燥して荒涼とした土地のイメージを伝えたり、どこか懐かしさをおぼえるような色褪せた表現が楽しめます。
という事らしい。
昔の写真というと「フィルムライク」という言葉を思い浮かべるのだが、ここでフィルムライクに現像した写真と、里びを使って現像した写真を比べてみたい。
ちなみにフィルムライクな現像にはLuminar3というソフトと、海外の愛好家が作った富士フィルムのフィルムシミュレーションを模したプロファイルを使用している。あくまで愛好家が作ったものであるし、私もFUJIのカメラを使った事がないので厳密にどこまでフィルムシミュレーションを真似できているかは分からない。その点は先にお断りさせてほしい。
先ずは普通にカスタムイメージ「鮮やか」で仕上げた写真
よく見ると水平が取れていないが、写真の良し悪しは別にして、色合いはPENTAXの標準的な「色」だ。
続いて、フィルムライクな写真(左)と、里びでカメラ内現像した写真(右)
フィルムライクな方はFujiのクラシッククロームに似せたもので、これは先にも書いたが海外の愛好家が作ったプロファイルをLuminar3で使用して現像したものだ。
上の鮮やかの写真と比べると、左の写真も、そして右の里びも昔っぽさが出たのではないだろうか?それは水色っぽい空や、彩度が低い感じが特徴的だ。
比べると、わずかに「里び」の方が空の青が濃いように見える。しかし全体の明るさを上げると左の写真に近づいていく。明らかに違うのは赤系の彩度が「里び」は低い。船の浮き輪の赤色や、船体のオレンジ色のラインを比べるとはっきと違いが出ている。
フィルムライクをLightroomで作る
次にLightRoomのパラメーターを弄ってフィルム風な画像にしてみる。
手順としては、
・ビネットを強調
・ノイズを追加
・シャドウ、ハイライトに色をのせる
という感じになるが、これは嵐田大志氏の「デジタルでフィルムを再現したい」という本を参考にしている。
もし、詳しい方法を知りたい方がいれば、そちらをオススメしたい。単純に手順を紹介するだけでなく、なぜ、そのような編集をするのかも書いてあって面白かった。
さて、Lightroomで編集したのが次の写真だ。Lightroomで編集したモノ(左)、里びで現像(右)
ハイライトに色を加えているので空が赤みがかっている。またビネットとノイズを追加したことで古い写真っぽさが出たような気がするが、人によっては編集過多と思うかもしれない。
同じ写真で数パターンを載せてみたが、どれが一番好みに見えるだろう?
他の写真でも比較していく
今度はPENTAXの「鮮やか」,「里び」のカスタムイメージと、Lightroomで編集した写真を並べて比較してみたい。
雪の中で傘を差しながら桜を眺める女性。
これをLightroomで編集したのが左、里びは右になる。
里びは赤の彩度が低くなり、せっかくの桜が「桜」に見えない感じがするのが残念。
次は、伊豆半島のどこかの漁港
FA Limited30mmで撮影。
Limitedやオールドレンズで撮った写真は昔っぽい加工と相性が良い気がする。
左はLightroomで編集。右は里び。
次はオールドレンズの「Jupiter-9」で撮影。
開放で撮るとすぐに白っぽくなるし、ピントは合ってるんだか分からないぐらい緩いレンズ。
これは難しいと思って放置してたけど、昔っぽい表現(加工)と相性が良さそう。
左がLightroom、右は里び。
おなじくJupiterで撮った写真。
みなとみらい。ハンマーヘッド付近。
絞ると緩い描写がハッキリしてくるが、それでも柔らかい感じだ。
上と同じく左がLightroom。右が里び。
里びにすると赤の彩度が低くなって、すこし物足りない感じがする。
最後にもう一つ。
メーカーの言う乾燥して荒涼とした表現を「砂漠」で試した。
今度は左が「鮮やか」で、右が「里び」
“里び”を試してみて
さて、ここまで「里び」を試してきたが、「鮮やか」と比べて昔っぽさは感じられただろうか?
「昔っぽさ」を求めて里びを使ってみたが、個人的にはもう少し味付けが濃い方が好みだと思った。
そのためにオールドレンズを使ったり、里びのパラメーターを弄ることも必要かもしれない。
上の写真はDegitalCameraUtility(純正ソフト)で現像し、全体的な露出を下げたものだ。
しばらくRAW+で「里び」を試して行こうと思う。
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